自由だけど厳しい、米ザッポス社のカルチャーフィット採用

企業文化で有名な靴の通販会社、ザッポス社(米・ラスベガス)。

私はこの会社をほぼ毎年見学しに行き、彼らのビジネスのやり方を定点観測しています。昨年末に訪問した際には、彼らが導入したホラクラシーと呼ばれる新しい組織構造を教えてもらいました。

この会社、職場は非常に自由な雰囲気で溢れていますが、その裏では、非常にロジカルで、時には厳しい、しっかりとしたシステムが整えられています。

そこで企業文化という視点から見た、彼らのビジネスのやり方をご紹介していきたいと思います。

ザッポス社によれば、優れた企業文化を創るために、1番大事なのは、コアバリューを創ること。これについては別の機会にご紹介させていただきます。

そして2番目に大事な活動が採用です。

そこで、本記事では、彼らが実践している「カルチャーフィット採用」をテーマにさせていただきます。

注意1.
記事の内容は私が見学/調査した時点での情報を基にしています。

注意2.
彼らのビジネスのやり方は常に変化・進化しており、本記事の内容が必ずしも現在実践されているとは限りません。

注意3.
記事の内容は、あくまで彼らのコアバリュー(共有されている価値観)をベースにした採用の方法であり、他の組織において、これらの方法が最適解とは限りません。

 

何を探しているのかを知らなければ、決して見つけることはできない  – 完璧なチームメンバー像を創れ

 

採用活動で最初に行うべきは、完璧なチームメンバー像を創ること。

マーケティングにおいては、明確な顧客像を描くことが最初の大きなステップとなりますが、採用においても同じで、明確な採用候補者像を描くことが最初のステップになります。

具体的には、ジョブディスクリプション(職務記述書)を書くことから始めます。ここで重要なのが可能な限り、明確に、具体的に、人材の理想像を書くこと。

大半の会社における職務記述書は、求人サイトに載せるために作った、役職、仕事内容の箇条書き、給与、必要なスキルや資格などが書かれているだけだと思います。

一方のザッポスの職務記述書では、そういったテクニカルなことよりも、どんなパーソナリティを持った人を求めているかを重要視して書かれています。

ザッポスによれば、自社のコアバリューが表現された職務記述書を用意することで、仕事内容を伝えるだけではなく、自社に合わない候補者をこの時点でより分けることが出来ると言います。

 

応募フォームにもクリエイティビティを

 

応募フォームにもクリエイティビティを少し加えるだけで、より候補者のことを知ることが出来ると言います。

たとえば、彼らの応募フォームには、標準的な項目(名前、経歴、資格等)の他に、下記のような質問があったりします。

Q. あなたの運の良さを10段階で自己評価してみてください。
1・・・なぜかわからないが、いつも悪いことばかり起こっている。
5・・・運の良さは平均的だと思う。
10・・・なぜかわからないが、いつも良いことばかり起こっている。

Q. 自分をヒーローに例えると誰ですか?それはなぜですか?

 

カバーレターは動画で

 

ザッポスでは、履歴書のカバーレターに動画を使うことを求めています。

カバーレターとは、履歴書に添付する書類であり、通常は挨拶や簡単な自己アピールを記載します。

いまの時代、誰でも自分の動画を撮影して、インターネット上に公開できる時代です。

ザッポスでは動画カバーレターを使うことで、候補者の人物像をより正確に把握するようにしています。応募者は自分で動画を撮影し、Youtubeにアップして履歴書と一緒に送ります。

Youtubeで「Zappos coverletter」と検索すると、確かにいろいろと出てきます。

z_cover

 

社員紹介制度を活用しよう

 

ザッポス社の空きポジションは一般公開されており、もちろん社員も見ることが出来ます。

そこで、ザッポスでは、社員紹介制度を用意し、カルチャーフィットする人材の確保に努めています。

人材を紹介してくれた社員に対しては、ケースバイケースですが、200ドルから2,000ドルのボーナスが支払われます。

ちなみに紹介制度でボーナスを受け取るためのルールとしては次のようなものがあります。

・紹介者はフルタイム社員でなければならない。
・紹介した人材が入社してから90日間在籍した時点で、ボーナスの権利が発生する。(紹介した人材がすぐに辞めてしまったらボーナスは支払われない)
・人事部門の社員に対してはボーナスは支払われない。
・過去にザッポスで働いた経験のある人を紹介してもボーナスは支払われない。

 

面接はまず電話で

 

アメリカの国土の広さの問題もあると思いますが、書類選考を通過した候補者は、まず電話での面接に臨みます。

ザッポスでは、面接のプロセスを単に人材を評価するためのものではなく、両者の関係を構築し、ザッポスが候補者にとって本当に合っている会社なのかどうかを判断してもらうためのものとして捉えられています。

この辺の考え方は、彼らの顧客に対する考え方と近いものがあると思います。

電話面接は、基本的にインフォーマルな雰囲気で行われ、たとえば次のような質問が成されます。

「過去の同僚は、あなたのことをどんな人だと言うでしょうか?」
「仕事で最も楽しかった経験は何ですか?それはなぜですか?」
「いまの仕事で最も良い点は何ですか?」

 

面接はまず社内ツアーから

 

電話面接を通過した候補者は、ザッポス本社に招かれます。ザッポスでは、空港から自社専用のシャトルバスが用意されており、候補者はそれに乗って本社にやってきます。

社員の人から聞いた話だと、候補者がバスのドライバーにどういう態度で接しているかも密かにチェックされているそう。

本社に到着すると、面接の前に、本社ツアーが行われます。これは社内の雰囲気を感じてもらうために行うもの。ツアーの最後には、ザッポスの「カルチャーブック」が手渡されます。

カルチャーブック

彼らのカルチャーブックは、社員の声で成り立っていて、候補者はザッポスで働くとはどういうことなのかを理解することが出来ます。

ツアーが終わると、面接が始まります。

面接は人事ではなく、”リード”と呼ばれる該当部門のチームリーダー的存在の社員が行います。

リードは面接を行う前に、人事チームから面接の進め方を学びます。

ここでは、技術的なスキルや人間性の評価がされることはもちろん、現場のリードが、この人と一緒に働きたいと思うかどうかが重要視されます。

面接時には、コアバリューに基づく質問が行われます。以下はその一例です。

「ザッポスのカスタマーサービスについての哲学をあなたの言葉で教えてください」
「ザッポスのカスタマーサービスは、他社と比べて何が優れていると思いますか?また、あなたはそれにどう貢献できますか?」
「あなたにとって、最高のカスタマーサービスとは何でしょうか?」
「あなたが他人に贈ったもので最高のものはなんでしたか?」
「ワークライフバランスをどう考えていますか?」

 

オファーレター(採用通知書)も普通じゃダメ

ザッポスは、あらゆるものを企業文化を表現するための機会と捉えていますが、オファーレターもその一つ。ありふれたテンプレートを使うようなことはしません。

彼らのオファーレター(正確にはオファーパッケージ)は、靴のボックスで届けられるそうです。

shoe

ザッポスのコアバリューのひとつに、「驚き(WOW)を届ける」というものがあります。

オファーレターを通じて、まず、新入社員に驚き(WOW)を届け、ザッポスではこういう行為が求められるんだ、という期待値を設定するのです。

 

「4,000ドルあげるので、辞めて良いですよ」

 

ザッポスにおけるカルチャーフィット採用の最終関門が、4,000ドルのオファーです。

これは、採用後のトレーニング終了時、

「もし、ザッポスが自分に合わないと思ったら、4,000ドルあげるので、辞めても良いですよ」

という提案をするというものです。

自社の企業文化に合わない人は、お金を払ってでも入社させたくない、というのがザッポスの決意なのです。

中途半端な気持ちで仕事に取り組む人が、同僚にもたらす悪影響は4,000ドルどころでは済まない、というのがザッポスの考え方。

提案する額は最初は数百ドルだったそうですが、徐々に上がっていき、いまでは4,000ドルになっているのだそうです。

ちなみに、この提案を受け入れる人は、全体の1%以下とのこと。

 

以上が、ザッポスのカルチャーフィット採用の特徴です。

このほか、人事関連で言うと新入社員トレーニングや解雇の方法などがありますが、それはまた別の記事でご紹介していきます。

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Naoki Shimizu

Naoki Shimizu

一般財団日本アントレプレナー学会代表理事
大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、モバイルコマースの創業メンバーとして参加し、上場を目指すが頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。
Naoki Shimizu

Naoki Shimizu

一般財団日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、モバイルコマースの創業メンバーとして参加し、上場を目指すが頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。