企業文化はどこから生まれるか?

企業文化はどこから生まれるのか?

それを理解することが、企業文化を変革するためのヒントにもなるだろう。

企業文化は、その会社が直面してきた、過去の課題や挑戦、それにどう対処してきたか?その成功体験、失敗体験を経て形創られるとされている。

例えば、私が以前在籍していたマイクロソフトは、創業当時から、ライバルを蹴落として売上を上げてきた。その経験が成功体験となり、”これが私たちのやり方だ”と新入社員に伝承されていくことになる。

さらに会社の歴史を振り返っていけば、そもそも、創業者自身の価値観や信念が企業文化の構築に大きな影響を与えていることがわかる。

 

創業者の価値観が企業文化に深く影響を与える

特に創業当初の企業文化は、創業者、創業メンバーの個人的な性格や背景、価値観、そして彼らが持っている組織の将来像に強く結びついている。

これが文化を変えるのが難しいひとつの理由である。

創業者が会社を創ったとき、彼らの仕事のやり方、ビジネスのやり方が組織のルールや構造になる。新しくチームに加わるメンバーは、そのやり方に従うことになる。

 

パタゴニアの例:

パタゴニアは、アウトドア用品で世界的に有名な企業。パタゴニアの本社はカリフォルニア州ベンチュラという場所にある。

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本社には、創業当時の作業場が残されていたり、社員用の保育所があったりと、「パタゴニア」という企業を象徴するような本社になっている。

そして、何より、彼らのビジネスのやり方は、創業者であるイヴォン・シュイナード氏の価値観を深く反映している。
たとえば、米国の小売業では、ブラックフライデーと呼ばれる大きな商戦日がある。多くの小売業がこの日には、キャンペーンを行うが、パタゴニアはこの日にあえて、パタゴニアの商品は買わないように、という広告を出したのだ。

なぜなら、キャンペーンをおこなって新しい服を売りまくってしまっては、将来ゴミが増えることになるからだ。

そこで、新しい服を買うのではなく、今持っている服を直して使ってください、というメッセージを出したのである。

イヴォン・シュイナード氏は、環境保護を軸にパタゴニアを創業し、運営してきた。いまなお、こういった象徴的で

一貫性のある行動を取ることで、ますますファンの心を掴んでいる。

パタゴニアが大事にしている価値観は次の4つである。

Quality(高品質)
Integrity(誠実さ)
Environmentalism(環境主義)
Not Bound by Convention(これまでの慣例にとらわれない)

創業以来30年以上たち、社員が増えた今でも、これら4つの価値観が完全に引き継がれている。

たとえば「高品質」という面では、社内にファブリック・ラボがあり、高品質の生地の研究と開発が常に行われている。

先ほどのブラックフライデーの件は言行一致、つまり「誠実さ」の現れと言えるだろう。

また、ウェットスーツ用の環境性能に優れた生地を開発し、特許を取得したが、その技術を他のライバルメーカーにも無償で提供している。

これも自分たちの「環境主義」という価値観を実現するにはどうすれば良いか?と考えた結果といえる。

このように、パタゴニアでは価値観を単に言葉として並べるだけではなく、それを日々実感するように仕事が行われている。

 

ザッポスの例:

日本でも有名な靴のオンラインコマース企業。

サービスを提供するついでに靴を売っている、と言われるほど優れた顧客サービスとそれを支える企業文化が有名だ。

ラスベガス市の建物を改築し、社屋にしてある。ザッポスはオフィスのテナント料を市に払うことで市の財政に貢献している。社屋では、広場を動物園にしてしまい、地域住民との交流を図るなど、グローバルにビジネスをしながらも、ローカルコミュニティを大事にする姿勢がみえる。

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また、ヒエラルキー型の組織構造を崩し、ホラクラシーと呼ばれる極めてフラットな組織を採用し始めた。これだけの規模(社員1600名)でホラクラシーを導入するのは、世界でも類を見ないそうだ。

広告の出し方もユニークだ。基本、ザッポスは大々的な広告は出さないとされている。

しかし、彼らはラスベガス空港の手荷物検査所のトレイがボロボロだったのに気が付き、新品のトレイを提供するとともに、そのトレイにザッポスのロゴを貼り付けた。

ラスベガス空港は毎日膨大な人が利用するので、大きな宣伝効果がある。世の中の役に立ちながら知名度を広げるというユニークな方法といえる。単純に広告代理店にお金を払う以外にも、方法があるということだ。

さらに、彼らのコアバリュー(核となる価値観)の中に、「Pursue Growth and Learning(成長と学びを追求する)」というのがある。

その価値観を体現する存在としてGoal’s Coachの活動がある。

Goal’s Coachの仕事は、社員の目標を支援すること。具体的には、セッションを受ける社員が30日間の目標を設定し、それに向かって進捗をチェックするため、コーチと週一回30分間のセッションを行う。

社員は役職や部署に関係なく、セッションを受けることができる。これまでのところ、設定した目標を達成できた人は、98%にも上り、さらに、44%の人は社内での昇進をすることができたそうだ。

目標を達成すると、Goal’s Clubへの入会が許可され、みんなからお祝いを受けられる。

一見すると、これは完全に社員を満足させるための制度のように見えるが、調査によると、このような制度を導入することで、社員の個人的な生活が向上するだけではなく、キャリア面での向上が見られるそうだ。会社は社員の定着率アップ、エンゲージメント向上、生産性の向上などが得られることになる。

社員は、能力を高める機会を得られたり、自信が得られることで、より責任ある仕事に取り組むようになる。また、このような制度があることで、会社は社員に、“社員の成長は会社にとってとても価値のあることなんだ“というメッセージを送ることが出来るのだ。

これは一貫性のある企業文化を創るにあたって、とても大切なことだ。”企業は人なり”と口で言っているだけでは何も起きない。

Goal’s CoachのAugusta Scottさんはこう言っている。

“目標や夢を達成できると、彼らの可能性が解放され、仕事やキャリア面にも明らかによい影響が出るのです。私たちには、仕事と個人的な生活は別々なものではなく、お互い交差するものであるということがわかっています。”

仕事と私生活を分けるワークライフバランスという言葉が流行っている、ザッポスは、この二つは切っても切れないものであり、相乗効果があるものだと知っている。

また、次のようにも語っている。

“社内にコーチを持つかどうかは、単に経済的な投資効果を上げるロジックがあるかどうかで判断することではありません。「ザ・ドリーム・マネージャー」の中で、マシュー・ケリーが書いていますが、社内のコーチの中心的な役割は社員を幸せにすることなのです。こういった制度がなければ、会社はどうやって社員の価値観ややりたいことを知るのでしょうか?私はROI(Return on Investment)ではなく、ROE(Return on Employee)という言葉を使っています。会社が社員を気にかけることで、彼らも会社のことを気にかけてくれるのです。それが最終的には投資効果をもたらす事になるでしょう。“

 

文化が足かせになるとき

創業者の価値観によって会社が成功し続ければ、同じ価値観で運営され続ける。逆に、その価値観では時代の環境についていけなければ、変革の必要性に直面する。これを表す例としては無印良品が挙げられる。以下にインタビューを抜粋する。

私は「セゾン文化」と言われた独特の組織文化が、逆に足かせになっているのではないかと考えました。西友はセゾングループのひとつでしたが、セゾングループは、堤清二さんという稀代のカリスママーケッターによる感性が、大きな力となりました。その影響もあって、西友は先輩の背中を見て育つ経験主義の社風でした。この社風は良品計画でも同じでした。しかし、経験主義は特に「守り」に弱い。たとえば、ある冬に、売り上げが落ちたとしましょう。その年が暖冬だったとしたら、経験主義だと「暖冬対策がうまくいかなかったね」ということで終わってしまう。けれども、実際には暖冬でも業績良好の企業はあるわけです。そういう会社は、暖冬でもモノを作る「仕組み」を持っています。  - プレジデントオンライン「勝つ仕組み」のない会社が消える時代 良品計画会長・松井忠三氏インタビュー

 

業界の特性

創業者が文化形成に影響を与えると同時に、業界の特性も見逃せない点である。業界独自の特性や要求によって、業界内の会社は似たような文化を持つことがある。たとえば、保険や銀行業は、安定的で、詳細を重視する会社が多い。ITやハイテク業界ではイノベーティブな文化を持つ。そして、NPOの組織では、人やチームを重視する傾向がある。

また、多くの規制に縛られている業界、たとえば金融、ヘルスケア、原子力などでは、会社内でも多くのルールが作られがちであり、官僚的な組織構造、安定的な組織文化が見られる。

このように業界によって理想的な文化というものが変わってくることを見逃してはならない。たとえば、他の業界で、魅力的に思える文化を持つ会社があり、それを単純に真似しようとしても、果たしてその文化が自社の置かれている業界で有効かどうかはわからないからである。

 

 

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