優れた企業文化をいかにして保つか?

会社が成熟するにつれ、企業文化、そしてその核となっている価値観は強化されていく。そうなると誰を組織に入れ、誰を入れないか?が決める仕組みが必要になる。

さらに新しい社員を採用したのち、彼らが組織の文化に溶け込めるような仕組みが必要になる。そこで登場するのが、Attraction-Selection-Attritionとオンボーディングという概念である。
これらは組織の文化を保つために重要な役割を果たす。

 

Attraction-Selection-Attrition (ASA)プロセス

1.Attraction(魅了)

Attractionとは、求職者を組織文化に惹きつけるということだ。どんな文化に惹きつけられるかは、人それぞれである。
たとえば、競争心の強い人は、社員同士を競わせる構造や仕組みがある文化を魅力的に感じるだろう。一方でそうでない人は、チームワーク重視の文化に魅力を感じるだろう。

企業側が文化を強めれば強めるほど、そして、それを対外的にも表現するほど、求職者はその企業が自分に合うかどうかを自己判断できるようになる。

もちろん、単に価値観が合うという理由で会社を選ぶだけではない。人によってはそれよりも充実した福利厚生を重視する人がいる。そこで、Selectionのプロセスに移る。

 

2.Selection(選別)

求職者が自分に合う会社を探すのと同様、企業側も自社の文化にフィットする人を選別することになる。いま、企業文化を重視する会社では、その人が仕事を行う能力があるかどうかと同様、またはそれ以上に、会社の文化に合うかどうかを採用の基準にしている。

例えば、サウスウェスト航空は、その人の仕事の能力よりも、性格や態度を重視して採用を行っている。能力は採用した後に学ぶことが出来るからだ。同様の採用基準を設けている会社は増えているが、求職者が自社の文化に合うかどうかを判断する方法は、会社によってまちまちである。

たとえば、グーグルでは、既存社員による複数回の面接を行っている。つまり、候補者の将来の同僚に面接させることで、候補者が職場にフィットするかどうかを判断しようというということである。

また、コンテナストア(収納用品を専門的に扱うチェーン店)では、顧客の中から積極的に候補者を選んでいるという。コンテナストアの顧客は既に整理整頓することに興味があり、店の運営方針や社員の対応を知っていて来店しているため、将来的に素晴らしい社員になる可能性が高いだろうということだ。

また、社員の満足度を高める努力がされており、社員紹介制度も奨励している。それらの施策が上手く融合した結果、高い社員満足度、採用費用の削減、高いカルチャーフィットが実現している。

企業文化に力を入れるザッポスでは、採用選考そのものも厳しいが、採用後の仕組みもユニークである。新人は採用後、数週間の研修(カルチャーキャンプ)を経たのち、二つの選択肢を迫られる。

・2000ドル受け取って辞める

・ザッポスで働く

という選択肢である。ザッポスで働くよりも、目の前の2000ドルを選択する人は、そもそもザッポスに合わない、ということだ。彼らはそれだけ、”誰を中に入れるか?”ということに注意を払っている。

 

3.Attrition(人員の削減)

どんなに選考を厳しくしたとしても、様々な要因でどうしても、会社に合わない人が出てくる。人が人を選考している以上、バイアスは避けられないものだ。そこで、次のプロセス、Attrition(人員の削減)が登場する。

ちなみにAttritionは、”意図せずに減っていく”という意味があり、会社に合わない人を解雇する、ということではない。

研究によると、”会社と合わない”というのが大きな退職理由となっている。つまり、合わない人を辞めさせるというよりも、自然と辞めていくというほうが正しいだろう。

 

ASAの考え方は、共通の価値観を持つ人を集め、選ぶ一方で、入社後にやはり価値観に合わなかった人は自然と退職していくということになる。生物は自分の体に合わない異物を体の中に入れようとは思わないし、たとえ入り込んでも自浄作用で外に排出しようとする。組織もこれと同じで、強い企業文化を持つ会社は人材に対して自浄作用を持っていると言えるだろう。

 

オンボーディング

海外でオンボーディングと呼ばれるプロセスがある。日本で言えば、新入社員オリエンテーションと言ったところか。このオリエンテーション、日本では特に中途の場合、せいぜい1日程度で終わる。やることは基本的な事務手続きや社員の自己紹介程度だあとはそれぞれ、これまで培ってきた彼らなりのやり方で仕事を始めるのである。

一方、文化を重視する会社では、オンボーディングプロセスは非常に重視されている。オンボーディングは、詰まるところ、新入社員を会社に馴染ませるためのプロセスである。

もしオンボーディングによって、社員を組織にうまくなじませることができれば、社員も自信を持って仕事に取り組めるようになるし、同僚からも受け入れてもらったという感情を受けることが出来る。それが社員と組織、同僚との結びつきを強め、仕事に対する取組み意欲や離職率の軽減につながるのである。

大半の会社では、新入社員が入ってくるとホッタラカシにされがちである。雇ってしまったら、あとは本人の能力次第、人間性次第で組織に馴染めるかどうかが決まるというわけだ。しかし、企業文化を大事にする会社では、入社後のオンボーディングにシステマチックなプロセスを採用している。

オンボーディングでは、新入社員に対して、まずは会社の文化や彼らの仕事、同僚などについて全体的な説明がなされる。これは新入社員が歓迎されているという感情を持つために重要である。

リッツカールトンホテルでは、オンボーディングに力を入れている企業のひとつ。2日間のオリエンテーションで、新入社員はホテルのレストランに招かれ、マネジメント層とともに食事をするという。

そして、目の前で一流の顧客サービスとは何かを体感するのである。その2日間でサービスの基準やチームワーク、彼ら独自の言葉を身につける。そして、入社から21日経つと、サービスの水準を満たしているかをテストされ、合格してようやく一人前になるのである。

新入社員のオンボーディングでは、人事部だけではなく、他部署の既存社員も重要な役割を果たす。様々な部署のリーダー層がオンボーディングに関わることで、新入社員はより早く会社のポリシーや文化を学ぶことが出来る。

また、既存社員がオンボーディングに関わることは、彼ら自身にとっても有用なことがある。
たとえば、私の知り合いの成長している保険代理店では、新入社員が入ってくると、既存社員と一緒に会社のカルチャーブックを読み合わせする。これによって新入社員は会社の文化を学ぶことが出来るが、一方の既存社員も新鮮な気持ちで改めて会社の文化を振り返ることが出来るのである。そして、新入社員の模範となるような行動を自然と取るようになるという。

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