企業文化の変革

企業文化は企業のDNAの一部であり、良い方向へ働くこともあれば、企業の変革の妨げとなることもある。実際のところ、多くの企業は自分たちの企業文化が生産性や業績の障害となっていることすら気付いていないこともある。

企業文化を変革する必要性に迫られるのは、主に自社と外部環境にミスマッチが生じたときである。

たとえば、ある組織では市場シェアの下落、売上・利益の下落、さらには倒産の危機など、切迫した状況に直面しているときである。このような状況においては、社員に企業文化の変革の必要性を納得させるのは容易である。

しかし、もしその企業が過去に成功し、かつ社員も企業文化の変革の必要性を理解していない場合、変革はより困難になる。

また、時には外部環境によって否応なく企業文化の変革が行われることもある。

M&Aが典型的な例だ。併合する2の企業の文化をどれだけ融合できるか、またはあえて融合させないか、そういった能力や判断がM&A後に重要になってくる。

ベン&ジェリーズがユニリーバに買収された時、ベン&ジェリーズはいくつかのユニークな部分は維持しようとしながらも彼らの企業文化の多くを変えざるを得なかった。CSR(企業の社会的責任)や創造性、楽しさはその文化の一部として残された。事実、ユニリーバは2000年にベテランのフランス人の役員をベン&ジェリーズのCEOに任命した際、彼はアイスクリームで作られたエッフェルタワーとエディット・ピアフの歌、そしてベレー帽とサングラスを身に着けた社員らに迎えられた。

同時に、企業は買収に応えるためにより業績志向に変わらざるを得なかった。すべての社員は常に最終利益を意識しなければならなくなった。その目的のため、社員たちは必要な会計と財務の学習コースを受講した。企業文化の変革を実現することはチャレンジングであり、多くの企業が最終的にこのミッションに失敗している。

ただし、企業文化の変革に成功した企業の調査とケーススタディから、以下の6つのステップによって成功のチャンスが増すことがわかっている。

 

1.危機感を作り出す

変革を成功させるため、従業員に変化の必要性を伝えることが重要である。それを実施するひとつの方法は、社員に対して緊迫感を作り出し、現在ビジネスが行われている基本的なやり方を変えることが何故重要かを説明することである。

リーダーたちは社員たちとコミュニケーションをとり、企業を将来の成功に導くための本質的な要素として企業文化変革が必要であることやその事例を示すことが求められる。たとえば、ルー・ガースナーがCEO兼会長となった1993年のIBMの状況を考える。メインフレームコンピュータが市場を独占する数十年が過ぎ、IBMは急激に競合にシェアーを奪われ、より安価な”クローン“により深刻な値下げ競争となっていた。

市場では、IBMの名前は衰退を連想させるようにさえなっていた。ガースナーはIBMが直面する危機が企業文化の変革を目指す彼の味方になると考えた。彼はすべての機会を通じて、危機を脱するには企業文化の変革が必要であることを説いた。

 

 

2.リーダーたちや他の主要メンバーを代える

リーダーのビジョンはその組織において、業務のやり方に影響を及ぼす重要な要素である。従って、文化の変革は組織のシニアリーダーの交替に伴うことがある。さらに、すばやくかつ効率的に変革を実施するために、変革の障害となっているマネージャーや他の力を及ぼす社員を交代させることが有効であると気づくことがある。

政治的な理由や、個人の利益、習慣によりマネージャーたちは変革努力に強力な抵抗を示す場合がある。これらのケースでは、そのようなポジションを変革をサポートしてくれる社員やマネージャーに置き換えることで変革が成功する可能性が増すことがある。

たとえば、ロバート・アイガーがウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOとしてマイケル・アイズナーと交替した際に彼が最初に行ったことは前CEOアイズナーに近い人間たちで組織された中央の企画部門の廃止である。この部門はディズニーの創造性の障害であると見られており、組織から排除することで、企業文化の革新性を確かのものにした。

 

 

3. ロールモデリング

ロールモデリングは社員たちの信念や行動を変えるためのプロセスである。CEOは文化を変えるために社員たちのモデルとなることができる。

たとえば、ロバート・アイガーがディズニーのCEOとなったとき、改革へのコミットメントを示すために、彼はゲーム開発の工程に彼自身が関わり、開発者サミットにも参加し、それらのゲームについてプログラマーたちにフィードバックした。このようにアイデア創造プロセスに彼自身が関わるというモデルを示した。

それとは反対に、トップの不適当な行動はより低い階層の社員に同様な行動を取るように導くこととなる。最近の事例はヒューレット・パッカード、開発カンパニーの取締役会メンバーを巻き込んだスキャンダルである。2006年、取締役会メンバーたちが自社の機密情報をプレスにリークしたと疑われた際、会社のトップマネジメントは漏洩源を発見するためセキュリティの専門家チームを雇った。

調査チームは役員たちの電話記録を探すため、役員とジャーナリストたちの自宅の電話記録を手に入れるために、役員のふりをして電話会社に電話をかけた。この調査チームのやり方が明るみに出た際、HPの会長と4人のトップ幹部が刑事および民事責任を課せられた。そのような行動をトップレベルの社員が取れば、企業文化に悪影響となるだろう。

 

4. トレーニング

社員たちに新しい規範と行動スタイルを学ばせることで、企業文化変革の必要性を自覚させることが出来る。例えば、スペースシャトル・コロンビア号が2003年2月のミッションを終え大気圏への再突入の際に空中分解した際、NASAは、より安全を配慮し、意思決定のミスを最少化するために組織の文化を変えることを決定した。そのために、チームプロセスや認知バイアスのトレーニングプログラムを組んだ。

 

5. 報酬システムを変える

社員に対する報酬や罰則の基準は既存の企業文化の決定に大きな役割を持つ。歩合ベースのインセンティブ制度から単純なサラリーシステムへの移行は営業スタッフたちがより顧客志向となる手段になりうる。

社員たちがお互いに協力し合うチーム指向の文化を構築したいのなら、個人ベースのインセンティブを適用するような手段は裏目となるであろう。反対に、チーム全員へのボーナスはその企業文化変革をより成功に導くことになるだろう。

 

6. 新しいシンボルとストーリーを創る

最後に、文化変革努力の成功率は新しい儀式やシンボル、ストーリーを創ることにより増す。コンチネンタル航空は1990年代に官僚主義を捨て、よりチーム指向となるべく文化を変えることに成功した企業である。

経営陣がまず実施したことが、800ページに及ぶ厚いポリシー手順書を彼らの駐車場で燃やしたことだ。かつて企業が所有した細かな手順書の多くを廃止し、権限移譲の文化を創造することの真の意味を示したのである。新しい手順書はたったの80ページとなった。このアクションは企業文化の来るべき変化のシンボルであり、社員の間で強力なストーリーとして機能した。

また、航空機材の再塗装も行った。これらもまた、新しいシンボルとなった。このように古いシンボルとストーリーを置き換えることにより、文化の変革が可能となることもある。

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