企業文化を表す「人工物」

エドガー・シャインによれば、企業文化の構成要素として、「信念・前提条件」「価値観」「人工物」の3つがあります。

そこで、ここでは「人工物」についてみていきましょう。

人工物とは、企業文化を表現する目に見えるモノといえます。

人工物によって、社内外に対して、自社の企業文化をわかりやすく表現することが出来ます。ここでは企業文化を表現するための5つの人工物をご紹介していきます。

 

経営理念

経営理念には、一般的にビジョン、ミッション、バリューなどが含まれます。良く経営理念を浸透させる、と言いますが、優れた会社では、「浸透」させるまでもなく、社員は入社前から既にそれに対して「共感」しています。

したがって、より多くの人の共感を得る経営理念であればあるほど、より多くの人材を惹きつけることが出来ます。
効果的な経営理念は、社員と共有され、みんながそれに基づいて動いています。つまり、企業文化が経営理念の中に表現されているということです。

一方、効果的ではない経営理念は、同業他社と似たり寄ったりだったり、形骸化していたり、曖昧すぎてなんの指針にもならないようなものです(一般にはこっちのほうが多いでしょう)。

形骸化している経営理念の例としてよく挙げられるのが、エンロンです。巨額の粉飾決算が原因で倒産した会社です。

エンロンは、経営理念として、「非常、無神経、傲慢とは無縁です」と謳っていましたが、実際のところ、傲慢さからくる粉飾決算で倒産しました。

逆の例では、たとえば、ミネソタ州にメイヨー・クリニックという有名な病院があります。メイヨー・クリニックは、創業者の「患者の最大の関心事こそ、我々の関心事である」という想いのもとに運営されています。

顧客第一、患者第一、と言いながら、社内の実態は売上至上主義となっている会社は多々ありますが、メイヨー・クリニックの場合、たとえば、どれだけ多くの患者を診たか?という点は、医者の評価には関係しないとされています。効率性を考えれば、なるべく多くの患者をさばけば利益が上がりますが、彼らの関心事はそこにはないのです。

 

儀式

その文化独特の儀式です。たとえば日本ならではの儀式があるように、それぞれの企業にも特徴的な儀式があります。みなと同じように儀式を行うことで、そのコミュニティに所属している、という意識を持つことが出来ます。

たとえば、典型的な儀式としては、化粧品会社のメアリーケイが行っているセレモニーがあります。トップの成績を上げた社員をピンクのキャデラックに載せて表彰します。

またリッツカールトンホテルでは、毎朝、ラインナップという儀式があります。理念や価値観について社員同士が話し合い、共有します。

このような儀式によって、組織と個人とのつながりを強化し、コミュニケーションを円滑にし、効果的な企業文化を創っていきます。

 

ルール

その会社独自のルールも企業文化を表す人工物と言えます。ルールといっても、いわゆる規則的な”守るべきもの”から、無料社食のような文化を象徴するような制度まで、幅広く存在します。

たとえば、次のような例があります。

20%ルール・・・グーグルは仕事時間のうち、20%は自分が興味あるプロジェクトに自由に使っていいと言われています。

人事評価制度・・・人材をどのように評価するかによって、その会社では何を重視しているのかがわかります。たとえば、通常、コールセンターではいかに効率よく電話に対応したか?ということが評価されますが、ザッポスのコールセンターでは、効率性ではなく、顧客と仲良くなることが重視されているため、一人の顧客と何時間でも話していいことになっています。

サンクスカード・・・ちょっとしたことを手伝ってくれた人に対して、サンクスカードと呼ばれる小さなカードを渡す仕組みです。

2,000ドルルール・・・リッツカールトンホテルでは、顧客の要望に応えるため、1人の顧客辺り2000ドルまでは現場の社員の判断で使っていいとされています。

その会社がどのようなルールを持っているかを見れば、どのような企業文化を持っているかもわかってきます。また、ルールには、リーダー層の個人的な信念や価値観が反映されていることもあります。

たとえば、”そもそも他人というのは信用してはならないものだ”という信念を持っているリーダーは、厳しい管理ルールをつくりがちです。一方、”うちの会社の社員はみんな優秀だ”と信じているリーダーは、ルールをあまりたくさん作りません。

さらに、組織図などもルールのひとつと言えます。フラットなのか、階層が多いのか?を見れば、文化が垣間見れます。ザッポスなどは昨今、ホラクラシーと呼ばれる極点にフラットな組織構造を採用しましたが、これも社員の自主性を信じているトニー・シェイの意思の表れと言えます。

 

建物、オフィスレイアウト

建物やオフィスレイアウトなどのワークスペースも、企業文化を象徴するものになります。たとえば、IT企業と銀行のオフィスではレイアウトも雰囲気も全く違うことがすぐにわかるでしょう。

たとえば、私が師事するマイケルE.ガーバーのクライアント、Infusionsoftのオフィスは、大きな倉庫のような空間で、ど真ん中にアメフトコート(フルサイズではないですが)があります。アメフトコートの芝の上で、ランチをしたり、打ち合わせをしたり、リラックスしたり、イベントをやったりできるようになっています。

infusion

また、企業文化に力を入れているザッポスの社内は、学園祭のような雰囲気であることが有名です。

zappos

さらに、社長室や役員室を設けているかどうか?デスクの配置はどうなっているか?なども企業文化を反映していると言えます。たとえば、星野リゾートの星野社長は、「自分の席はない」と発言してました。社長だろうが、空いている席に座ればいい、という考え方なのです。これは星野リゾートのフラットな組織文化を反映していると言えます。

 

「人工物」としては他にもその会社のストーリーなどがありますが、それはまたの機会にご紹介したいと思います。

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Naoki Shimizu

Naoki Shimizu

一般財団日本アントレプレナー学会代表理事
大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、モバイルコマースの創業メンバーとして参加し、上場を目指すが頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。
Naoki Shimizu

Naoki Shimizu

一般財団日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、モバイルコマースの創業メンバーとして参加し、上場を目指すが頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。